brothers&sister
兄弟愛
年末に中国から呼び出しを受けたのは数時間前。時期的には世の中はクリスマスで忙しくしている頃だ。日本もクリスマス商戦に精を出そうと準備に走り回っていたのだが突然の呼びつけに不承不承仕事から離れた。
中国の家は最寄り駅から車で数時間そこから徒歩でまだ数時間と仙人が住むような場所に作られている為できるなら訪問したくはない。冷たい風が吹きつく竹林を脇に足早に歩を進める。
「おや、」
曲がりくねった道を大きくカーブすると徐々に先達の姿が見えた。若い男女が二人何かぽつぽつと話しながら歩いている。然して大声ではなかったのだが日本の声に機敏に反応して二人が振り向いた。
「日本さん! こんにちは!」
「あぁー、久しぶり的な」
台湾と香港、共に近所に住む弟・妹分だ。台湾はふわっと花が開くような少女特有の可愛らしい笑顔を浮かべ道を逆戻りしてきた。黒く長い髪が揺れている。その後に香港が続いて戻ってきた。
「お久しぶりですお二人とも」
香港が追いつくのをまって挨拶する。二人は礼儀正しく挨拶を返した。
「お二人も中国さんの家に?」
二人から肯定が返ってくる。そもそもこの道の先は中国の家しかないので当たり前なのだが。
「この時期になると正月の用意するから来いって呼び出されるんですよ、毎年毎年」
「マジ面倒……もう皆で帰らない的な?」
「アンタさっきからずっとそればっかりじゃない」
ピシャリと香港の提案を撥ね付けて台湾が日本に向き直る。頭につけたピンクの花が揺れた。
「今年は日本さんもクリスマスご一緒されるんですか?」
「いいじゃんソレ。名案なんだけど」
「え? あー……いや、」
クリスマス、そういえばクリスマス直前に増える仕事にばかり頭がいっていて当日の予定など殆ど考えていなかった。思い出すのは中国から正月の準備に誘われたものの食事のマナーに口煩い中国に嫌気が差して途中で放り出してしまった昔の出来事。あれ以来クリスマスに関しては愚痴を言われるようになってしまったのだ。できるだけクリスマス周辺は近寄りたくないのが本音だ。
日本の言葉が終わらない内に台湾の瞳が悲しげに伏せられる。胸の奥で良心がぎゅっと絞られるような感覚に慌てて言葉を付け足す。
「えぇと、まだ、……わからないので今日中国さんに会って調整しようかと」
「そうなんですか、ご一緒できたら嬉しいです」
控えめに微笑んで台湾が組んでいた指を回す。後ろで香港は何か思いついたようで顎に触った。ポーカーフェイスに呟く。
「大丈夫そうならクリスマスまでこのまんまこっち泊まればいいんじゃない的な? 俺天才じゃネ?」
「アンタは今から一人で帰るんでしょ?」
「姉が愛をくれなくてぶっちゃけ俺、寂しくて死にそう」
全然寂しそうにも死にそうにもしていない。無表情で淡々と言うこの弟分はいまいち計りづらいのが難点だ。(多分自分も似たような評価を欧米から受けていることは棚にあげておく)しかもイギリスの支配を受けた後話し方だけは妙なテンションになってしまったのでその抑揚のない声とバリエーションの少ない表情とのギャップがひどい。
台湾はそんな香港に慣れているのだろう、くすくすと笑っている。二人のじゃれ合いを見るのは何年ぶりだろうか。子犬同士が転がっているときのようなほほえましい光景だ。
そんなことを考えながら二人を眺めていると香港がスタスタと間合いを詰めてきた。不思議に思っていると彼は停止せずに眼前まで迫ってきた。そのまま真正面から抱きつかれる。
「兄の愛で補えば良いんじゃん?」
「あー! 日本さんから離れなさいよ香港! ちょっと、もおおおお!!!!」
よくわからない理論だ。ただおかげで冷たい空気が大幅にシャットアウトできた上に体温が温い。その向こうから台湾の怒ったような叫び声が聞こえている。
「足りない姉の愛を補充してるだけ的な」
「わかったわよ! 今度夜市で奢ってあげるわよ! だからさっさと離しなさい!」
「マジで」
日本が口を挟む寸分の隙もなくいつのまにか取引は成立していた。香港は姉の妥協に満足したらしくあっさり日本を解放する。急に放り出されて先ほどより寒くなった気がする。背を丸めて腕を摩っていると控えめに袖を引っ張られた。
「日本さん、もう、あんなのほっといて行きましょ?」
先ほどまで叫んでいたせいで熱くなってきたのか台湾の顔は僅かに赤い。日本がそうですね、と答えると香港の声がした。
「置いてくとかマジパねぇんだけど」
「一緒に皆でお話しながら歩きましょうか。こうして会えるのも久しぶりなんですし」
冷たくなった頬を触りながら歩き出す。三人で並んでいると後ろから「哀号!」と叫ぶ聞きなれた絶叫がして中国の家へ向かうパーティがもう一人増えた。中国の屋敷まではまだ遠い。
アトガキ
ご本家で「日本さん」呼びだったので多分台→日は敬語かな…? 身内(中・香・韓)にはちょっと口悪くなるよ。ほのぼのアジアン大好きです。
香港さんがまだいまいちよくわからないんですが、無表情なギャル男喋り……にしたらなんだこれ。
『パラオとか台湾と日本の話』でした。
パラオさんはご本家にまだ影も形もないので勝手に香港さんを投入しました。
香港がwwww喋り方のせいでwwwwww韓国と同レベルにギャグ要員化してるwwwwwwwwwしかし香港に喋らすの超楽しいジレンマwwww
喋り方はヘタリアファンタジアにあわせてます的な。英語と日本語てどない混ぜたらいいんか全然わっかんね